相撲の星取表で 10 勝以上する場合の数を考える
相撲の世界では、勝ち越し(8勝以上)や二桁勝利(10勝以上)が力士の成績を評価する重要な指標とされています。
15 戦ある本場所で 10 勝以上を記録することは、安定した実力を持つ力士の証であり、優勝争いにも影響を与えます。
本記事では、確率論の観点から 「15戦で10勝以上する確率」 を求め、星取表の勝率分布を分析します。
まず、確率計算の方法として 組み合わせ(コンビネーション) を活用し、勝敗の全パターンを求めます。
その後、Python を用いてシミュレーションを行い、グラフを作成することで視覚的に理解できるようにします。
数学的アプローチ:組み合わせと確率の計算
相撲の星取表における勝敗のパターンは、各取組が「勝ち」または「負け」のいずれかで決まるため、二項確率モデル に基づいて考えることができます。
ここでは、組み合わせ(コンビネーション) を使って、15 戦中 10 勝以上する場合の数を求めます。
全ての勝敗パターンの考え方
勝敗はそれぞれ独立して決定されるため、全体の組み合わせの数 は以下の式で求められます:
\[\text{全パターン数} = 2^{15} = 32,768\]これは、各取組が勝ち or 負けの 2 通りの選択肢を持つため、全パターン数は \{2^{15}\}
となるためです。
10 勝以上する場合の数
勝ち星が ( k ) の場合、その組み合わせの数は 二項係数(コンビネーション) を用いて求めることができます:
\[C(n, k) = \frac{n!}{k!(n-k)!} \]ここで、( n = 15 )(試合数)、( k )(勝ち数)とした場合、
\[P(X \geq 10) = \sum_{k=10}^{15} C(15, k) \]具体的に計算すると、10勝以上するパターンの総数は 4,944 通り となります。
10 勝以上する確率
各勝敗は 均等な確率(50%) で決まると仮定すると、勝ち数 ( k ) の確率は以下のように求められます:
\[P(X \geq 10) = \frac{\sum_{k=10}^{15} C(15,k)}{2^{15}} \]この結果を計算すると、約 15.09% となります。
Python で計算
部分集合と確率の計算は,Python で行う。
また,計算した結果はグラフで表示する。
Python コード
Python コードを示す。
import math
import numpy as np
import matplotlib.pyplot as plt
import japanize_matplotlib
N = 15
total_cases = 2 ** N # 全組み合わせ数
kachiboshi = list(range(N, -1, -1))
kumiawase = [math.comb(N, i) for i in range(N + 1)]
kakuritsu = [k / total_cases * 100 for k in kumiawase]
# 累積比率を計算
累積比率 = np.cumsum(kakuritsu)
plt.scatter(kachiboshi, kakuritsu, label="確率", alpha=0.7, s=50)
plt.plot(kachiboshi, 累積比率, color='red', linestyle='dashed', label="累積比率")
plt.xlabel('勝ち星')
plt.ylabel('確率 [%]')
plt.yscale('log')
plt.grid()
plt.legend(loc="best")
plt.show()
# 10勝以上する組み合わせ数と確率を計算
winning_cases = sum(math.comb(N, i) for i in range(10, N + 1))
winning_probability = (winning_cases / total_cases) * 100
# 見やすい結果の出力
print(f"15戦して10勝以上する組み合わせの数: {winning_cases:,}")
print(f"15戦して10勝以上する確率: {winning_probability:.2f}%")
出力結果
10 勝以上する組み合わせの数と確率
- 15戦して10勝以上する組み合わせの数: 4,944
- 15戦して10勝以上する確率: 15.09%
グラフ
相撲の星取表における 勝ち星ごとの確率 を散布図で表します。
このグラフは、各勝ち星に対してどの程度の確率で達成できるかを示しています。
- X 軸 : 0 勝から 15 勝までの勝ち星
- Y 軸 : 勝ち星の確率(対数スケール)
また,確率分布だけでなく,累積比率も併せてプロットすることで「10 勝以上を達成する確率」を視覚的に確認できます。
勝ち星が増えるほど,累積比率が急激に減少していることがわかります。
これは二項分布の特性により極端な勝ち負けの組み合わせが少ないためです。

結果の考察
今回のシミュレーションでは、15戦中10勝以上する確率が約15.09% であることが分かりました。
これは、勝ち負けが均等(50%ずつ)で発生すると仮定した場合の確率ですが、実際の相撲の世界では力士ごとの強さや対戦相手の違いが影響するため、勝率は単純な二項分布には収まらないこともあります。
白鵬の勝率との比較
第69代横綱・白鵬の幕内通算勝率は 84.6% で、1場所平均 12.69勝 となります。
この勝率は、単純な二項確率モデルで示した 15戦で10勝以上する確率 15.09% より遥かに高く、白鵬がいかに圧倒的な成績を残していたかが分かります。