【G 検定】人工知能分野の問題
G 検定シラバス 2021 に基づき,人工知能の研究で議論されている問題や,人工知能の実現可能性を考察する。
トイ・プロブレム
現実世界の問題を,コンピュータで扱えるように,本質を損なわない程度に問題を簡略化したものを考える。それがトイ・プロブレム(おもちゃの問題)である。
トイ・プロブレムを用いることで,問題の本質を理解したり,現実世界の問題に取り組んだりする練習をすることができる。また,トイ・プロブレムは簡潔かつ正確に問題を記述することができるので,複数の研究者がアルゴリズムの性能を比較するために用いることができる。
フレーム問題
フレーム問題は,1969 年にジョン・マッカーシーとパトリック・ヘイズが提唱した人工知能における重要な問題である。未だに本質的な解決はされておらず,人工知能研究の最大の難問と言われている。
フレーム問題は,「今しようとしていることに関係のあることがらだけを選び出すことが,実は非常に難しい」ことを指す。
チューリングテスト
人工知能ができたかどうかを判定する方法については,歴史的に議論されてきた。有名なものに,イギリスの数学者アラン・チューリングが提唱したチューリングテストがある。これは,別の場所にいる人間がコンピュータと会話をし,相手がコンピュータだと見抜けなければコンピュータに知能があるものである。知能をその内部のメカニズムに立ち入って判定しようとすると極めて難しいことから,外から観察できる行動から判断せざるを得ないという立場を取っている。
強い AI と弱いAI
「強い AI」「弱い AI」という言葉は,もともとは,アメリカの哲学者ジョン・サールが 1980 年に発表した「Minds, Brains, and Programs」という論文の中で提示した区分である。
ジョン・サール自身は,人の思考を表面的に模倣するような「弱い AI」は実現可能でも,意識を持ち意味を理解するような「強い AI」は実現不可能だと主張した。
強い AI
適切にプログラムされたコンピュータは人間が心を持つのと同じ意味で心を持つ。また,プログラムそれ自身が人間の認知の説明である。
弱い AI
コンピュータは人間の心を持つ必要はなく,有用な道具であればよい。
シンボルグラウンディング問題
シンボルグラウンディング問題とは,1990 年に認知科学者のスティーブン・ハルナッドにより議論されたもので,記号(シンボル)とその対象がいかにして結び付くかという問題である。フレーム問題と同様,人工知能の難問とされている。
身体性
知能が成立するためには身体が不可欠であるという考え方がある。人間には身体があるからこそ物事を認知したり,思考したりできるという考えである。このようなアプローチは「身体性」に着目したアプローチと呼ばれている。
知識獲得のボトルネック
機械翻訳は,人工知能が始まって以来ずっと研究が続いている。1970 年代後半はルールベース機械翻訳という仕組みが一般的であったが,1990 年代以降は統計的機械翻訳が主流になった。これにより性能は飛躍的に向上したが,まだまだ実用レベルではなかった。機械翻訳が難しい理由は,コンピュータが「意味」を理解していないことが最大の問題であった。
人間が持っている一般常識は膨大で,それらの知識をすべて扱うことは極めて困難である。このように,コンピュータが知識を獲得することの難しさを,人工知能の分野では知識獲得のボトルネックと呼んでいる。
特徴量設計
機械学習では,「注目すべきデータの特徴」の選び方が性能を決定付ける。
注目すべきデータの特徴を量的に表したものを,特徴量と呼ぶ。
シンギュラリティ
人工知能の分野で語られるシンギュラリティー(技術的特異点)とは,人工知能が十分に賢くなり,自分自身よりも賢い人工知能を作るようになった瞬間,無限に知能の高い存在を作るようになり,人間の想像力が及ばない超越的な知性が誕生するという仮説である。このことは,知的なシステムの技術開発速度が爆発的に加速するということも意味している。
未来学者で実業家のレイ・カーツワイルは,このようなシンギュラリティーが 2045 年という近未来であることを主張している。シンギュラリティーは「人工知能が人間よりも賢くなること」であると広義の意味で使われることも多いが,カーツワイル自身は,そのような出来事は 2029 年頃に起きると予測している。