システムアーキテクト試験の対象者像

情報処理技術者試験 試験要綱 Ver. 5.0 で,システムアーキテクト試験(SA : Systems Architect Examination)の対象者像,業務と役割,期待する水準,レベル対応を確認する。

対象者像

高度IT 人材として確立した専門分野をもち,IT ストラテジストによる提案を受けて,情報システム又は組込みシステム・IoT を利用したシステムの開発に必要となる要件を定義し,それを実現するためのアーキテクチャを設計し,情報システムについては開発を主導する者

システム開発の上流工程を主導する立場で,豊富な業務知識に基づいて的確な分析を行い,業務ニーズに適した情報システムのグランドデザインを設計し完成に導く,上級エンジニアを目指す方に最適です。

https://www.jitec.ipa.go.jp/1_11seido/sa.html

業務と役割

〔情報システム〕

情報システム戦略を具体化するための情報システムの構造の設計や,開発に必要となる要件の定義,システム方式の設計及び情報システムを開発する業務に従事し,次の役割を主導的に果たすとともに,下位者を指導する。

  1. 情報システム戦略を具体化するために,全体最適の観点から,対象とする情報システムの構造を設計する。
  2. 全体システム化計画及び個別システム化構想・計画を具体化するために,対象とする情報システムの開発に必要となる要件を分析,整理し,取りまとめる。
  3. 対象とする情報システムの要件を実現し,情報セキュリティを確保できる,最適なシステム方式を設計する。
  4. 要件及び設計されたシステム方式に基づいて,要求された品質及び情報セキュリティを確保できるソフトウェアの設計・開発,テスト,運用及び保守についての検討を行い,対象とする情報システムを開発する。なお,ネットワーク,データベース,セキュリティなどの固有技術については,必要に応じて専門家の支援を受ける。
  5. 対象とする情報システム及びその効果を評価する。

〔組込みシステム・IoT を利用したシステム〕

組込みシステム・IoT を利用したシステムの要件を調査・分析し,機能仕様を決定し,ハードウェアとソフトウェアの要求仕様を取りまとめる業務に従事し,次の役割を主導的に果たすとともに,下位者を指導する。

  1. 組込みシステム・IoT を利用したシステムの企画・開発計画に基づき,対象とするシステムの機能要件,技術的要件,環境条件,品質要件を調査・分析し,機能仕様を決定する。
  2. 機能仕様を実現するハードウェアとソフトウェアへの機能分担を検討して,最適なシステムアーキテクチャを設計し,ハードウェアとソフトウェアの要求仕様を取りまとめる。
  3. 汎用的なモジュールの導入の妥当性や開発されたソフトウェア資産の再利用の可能性について方針を策定する。

期待する水準

システムアーキテクトの業務と役割を円滑に遂行するため,次の知識・実践能力が要求される。

〔情報システム〕

  1. 情報システム戦略を正しく理解し,業務モデル・情報システム全体体系を検討できる。
  2. 各種業務プロセスについての専門知識とシステムに関する知識を有し,双方を活用して,適切なシステムを提案できる。
  3. 企業のビジネス活動を抽象化(モデル化)して,情報技術を適用できる形に再構成できる。
  4. 業種ごとのベストプラクティスや主要企業の業務プロセスの状況,同一業種の多くのユーザー企業における業務プロセスの状況,業種ごとの専門知識,業界固有の慣行などに関する知見をもつ。
  5. 情報システムのシステム方式,開発手法,ソフトウェアパッケージなどの汎用的なシステムに関する知見をもち,適切な選択と適用ができる。
  6. OS,データベース,ネットワーク,セキュリティなどにかかわる基本的要素技術に関する知見をもち,その技術リスクと影響を勘案し,適切な情報システムを構築し,保守できる。
  7. 情報システムのシステム運用,業務運用,投資効果及び業務効果について,適切な評価基準を設定し,分析・評価できる。
  8. 多数の企業への展開を念頭において,ソフトウェアや,システムサービスの汎用化を検討できる。

〔組込みシステム・IoT を利用したシステム〕

  1. 組込みシステム・IoT を利用したシステムが用いられる環境条件や安全性などの品質要件を吟味し,実現すべき機能仕様を決定できる。
  2. 対象とするシステムの機能仕様に基づき,ハードウェアとソフトウェアの適切な組合せを設計し,それぞれの要求仕様としてまとめることができる。
  3. リアルタイムOS に関する深い知識と汎用的なモジュールに対する知識を有し,システムアーキテクチャの合理的な設計,ソフトウェア資産の再利用可能性の検討,適切な活用ができる。

レベル対応

共通キャリア・スキルフレームワークの人材像:システムアーキテクト,テクニカルスペシャリストのレベル4 の前提要件

アーキテクトへの期待

ソフトウェアアーキテクチャの基礎 エンジニアリングに基づく体系的アプローチ」(Mark Richards,Neal Ford,オライリー・ジャパン,2022年3月4日)には,アーキテクトへの期待が以下のように記されている。

ソフトウェアアーキテクトの役割を定義するのは,ソフトウェアアーキテクチャを定義するのと同じくらい難しい。その範囲は,プログラマーのエキスパートであることから,会社の戦略的な技術的方向性を定義することまで,多岐にわたる。そのため,ここでは役割を定義することに時間をかけるよりも,アーキテクトへの期待に焦点を当てよう。

与えられた役割や肩書き,職務に関係なく,ソフトウェアアーキテクトには主に次の 8 つが期待される。

  • アーキテクチャ決定を下す
  • アーキテクチャを継続的に分析する
  • 最新のトレンドを把握し続ける
  • 決定の順守を徹底する
  • 多様なものに触れ,経験している
  • 事業ドメインの知識を持っている
  • 対人スキルを持っている
  • 政治を理解し,かじ取りする

ソフトウェアアーキテクトの役割を効果的に果たして成功を収めるには,これらの期待を理解して実践することが第一の鍵となる。

ソフトウェアアーキテクチャの基礎 エンジニアリングに基づく体系的アプローチ」(Mark Richards,Neal Ford,オライリー・ジャパン,2022年3月4日)

参考文献


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