データ中心アプローチ
企業の業務活動は環境の変化に合わせて刻々と変化しているが,システムで取り扱われているデータは企業の経営内容が変わらない限りほとんど変化しない。データ中心アプローチ (DOA : Data Oriented Approach) は,この安定したデータ基盤を共有資源として先に設計し,そのデータに基づいてソフトウェアを設計するという方法論である。
データ中心アプローチは下図の手順で分析・設計を進める。

上図の標準プロセスとは,発生・変更・消滅といったデータライフサイクルに合わせた処理である。この処理をデータとカプセル化することで,「あるデータを更新する処理がアプリケーションごとに存在する」などというようなプロセスの重複を排除することができる。
データ中心のアルゴリズム
データ中心のアルゴリズムは大量のデータに対処することを目的として設計される。このようなアルゴリズムの処理要件は比較的単純であると想定される。非常に大きなファイルに適用される圧縮アルゴリズムはデータ中心のアルゴリズムのよい例である。このようなアルゴリズムでは,データのサイズが処理エンジン(シングルノードまたはクラスタ)のメモリよりもはるかに大きいことが予想される。このため,要件に従ってデータを効率よく処理するために,対話型の処理を設計する必要があるかもしれない。
過去問題
システムアーキテクト試験に出題されたデータ中心アプローチに関する問題を記載する。
データ中心アプローチに関する記述のうち,最も適切なものはどれか。
平成23年度 秋期 システムアーキテクト試験 午前Ⅱ 問題 問7
- データ資源の重複だけでなく,データを更新するプロセスの重複も排除することを目的としている。
- データとその処理手順のカプセル化に見られるように,オブジェクト指向の方法論をデータベース設計に応用しようとする試みである。
- データの流れに着目してシステム分析を行い,再利用可能なモジュールを抽出することによってソフトウェアの生産性を向上させることを目的としている。
- プログラム設計では,構造化設計技法を用いて業務システムを機能分割する必要がある。
正解は 1. である。
参考文献
- Imran Ahmad,『プログラマーなら知っておきたい 40 のアルゴリズム 定番・最新系を Python で実践!』,インプレス,2021年10月21日