投資の意思決定法

経済性計算の手法を利用して,正確な投資の価値を算出し,投資の意思決定を行う。

PBP (payback period method)

投資効果を評価する方法の一つで,投資額が何年で回収されるかを算定し,その期間(年数)によって投資事案を評価する手法である。

投資によって生み出されるキャッシュフローの累計額が投資額と等しくなる期間を年で示す値(投資回収年数)を求め,基準よりも短期間であれば投資を行い,そうでなければ見送る。投資案件が複数ある場合,より投資回収年数が短いものを選択する。

回収期間法は計算が非常に簡単であるが,貨幣の時間的価値や資本コストを考慮しておらず,回収期間以降のキャッシュフローを考慮していないなどの欠点がある。投資リスクが大きく資金の早期回収が優先される場合には,一定の有効性があると位置付けられる。

DCF 法

DCF (Discounted Cash Flow) 法企業(事業,プロジェクト,資産)が将来にわたって生み出すフリーキャッシュフローを推計し,その流列を一定の率(WACC)によって割り引いて算出した現在価値のこと。

企業価値やプロジェクト投資などの投資成果の価値評価する際に使われる。

演習問題

プロジェクト開始時点で 150 万円の支出を行う IT 投資プロジェクトにおいて,3 年間の金銭的価値を DCF 法で算定せよ。

なお,割引率は 20 % で固定とし,キャッシュフローは全て年度末に発生するものとする。また,金銭的価値の算定の際には年度ごとに百万円未満を切り捨てて計算している。

IT 投資プロジェクト 単位 百万円
投資年 プロジェクト開始時点 1 年後 2 年後 3 年後
キャッシュフロー -150 100 100 100

1 年後,2 年後,3 年後の金銭的価値は,それぞれ次式で求められる。

  • 1 年後の金銭的価値 = 100 ÷ 1.20 = 83 [万円]
  • 2 年後の金銭的価値 = 100 ÷ 1.202 = 69 [万円]
  • 3 年後の金銭的価値 = 100 ÷ 1.203 = 57 [万円]

NPV(Net Persent Value : 正味現在価値)

将来のキャッシュ・インフロー(現金流入)の現在価値から,投資であるキャッシュ・アウトフロー(現金流出)の現在価値を差し引いた正味の金額。

投資(金融投資および事業投資)の採算性を示す指標で,投資判断の最も一般的な基準となっている。

例えば,情報システムの導入と活用によって生み出されるキャッシュフローの現在価値を計算することによって,投資効果を評価したいときに使われる。

簡単にいえば DCF(Discounted Cash Flow 法)をベースに「回収額 – 投資額」を算出したもので,その投資案件で得られる正味の価値(金額)のことである。

NPV が大きければ大きいほど経済価値が大きく,NPV がマイナスであれば採算が得られないことを示す。

ROI

ROI(Return on Investment : 投資利益率)は,IT 投資効果の評価に用いられ,投資額を分母に,投資による収益を分子とした比率を算出し,その大小で評価する。

ROI の値が大きいほど,投資効果が高いと評価できる。

ROI [%] = 投資による収益 ÷ 投資額 × 100

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