プロジェクト憲章
PMBOK において,プロジェクト憲章は,プロジェクト統合マネジメントの立上げプロセス群で作成する。
プロジェクト憲章を作成し,プロジェクトの認可を受けることにより,プロジェクトは公式に認可され,プロジェクトマネージャには必要な権限が与えられる。
なお,体制が決まっていれば,プロジェクトに対する共通認識を醸成するために,キックオフミーティングで,プロジェクトメンバーらにプロジェクト憲章を配布することがある。
プロジェクト憲章は,英語では Project Charter と呼ばれる。
プロジェクト憲章は,プロジェクトの存在を正式に認可し,プロジェクト活動に組織の資源を適用する権限をプロジェクトマネージャーに与えるための文書
PMBOK 第 5 版
プロジェクト憲章とは,プロジェクトを立ち上げる際に策定される,プロジェクトの目的や条件,内容などを明確に定義した文書。
IT 用語辞典 e-Words
プロジェクト憲章で明確にする内容
プロジェクト憲章で最低限明確にする内容は以下のとおり。
プロジェクト憲章は,プロジェクトの計画と実行をする前の企画書の位置付けで,6W2H の詳細を明確にしていく。
企画書のフォーマットが企業や個人で違うように,プロジェクト憲章の世界共通フォーマットは存在しない。
ページ数も,プロジェクトの規模や難易度によって異なる。
原則としてプロジェクトのオーナーやスポンサーが作成して,プロジェクトマネージャ(PM)に提示する文書だが,組織内のプロジェクトなどでは実務上は PM(または,その候補)が作成し,オーナなどの承認を受けて発行される場合もある。
組織によっては組織内の決裁文書などがその役割を果たし,「プロジェクト憲章」という名称では作成しないこともある。
プロジェクト憲章の構成
基本情報
プロジェクト名,プロジェクト憲章のバージョン番号,作成者,この文書の目的を明記する。
プロジェクト名は「誰のための何のプロジェクトなのか」を明確にしたわかりやすい名称にする。
ビジネスニーズ
プロジェクトを立ち上げる理由となる「市場または組織内で解決が求められる問題や課題の内容」を記載する。
プロジェクト概要/目的・目標/主要要求事項
本プロジェクトがどのように既述ビジネスニーズを解決するのか,その解決のための主要な目的や目標は何か,その目的や目標に対しどのような要求事項があるのかを記載する。
ビジネスケース
企業や組織で当プロジェクトに投資をした際,その投資が将来にどうなるのかなどのプロジェクトの適正性や合理性を記載する。
成果物
本プロジェクトにより生み出される成果物は何かを記載する。
成果物の納期
本プロジェクトにより生み出される成果物がいつ納品されるのか,その期日を明確にする。
前提条件
プロジェクトの成功のために発生する確度が高い条件を前提条件として記載する。
制約条件
当プロジェクトにおける組織内または顧客との制約条件を確認し記載する。
主要マイルストーン/スケジュール
成果物の納期や完了日とは別に,主要マイルストーンを設定する。
人的資源/能力・技術
当プロジェクトを開始,実行,完了するにあたって必要な人材の能力,技術などを記載する。また,それらの人材は内部の人材か外部から調達するのかなどを記載する。
予算
プロジェクトを完了させるまでの予算を明確にする。
可能であれば,成果物や要素成果物ごとに予算を割り当てて記載する。
主要リスク
プロジェクトで発生する可能性がある主要リスクを記載する。
プロジェクト組織
当プロジェクトをどのような体制で進めるのかを明確にする。
役割/責任/権限
プロジェクト組織の各役割について明確にする。役割名,役割の説明,役割の責任,権限を記載する。
主要ステークホルダー
プロジェクトのステークホルダー(個人または組織)を明確にする。そして,各ステークホルダーの当プロジェクトへの公式な「関心事項」を明確にする。
変更コントロール
どのような事象がどのぐらいのレベルで発生した際に,誰(個人,グループ,組織)が,いつ,どのようなプロセスで決裁し,その場(会議など)は誰が参加するのか,どのような決裁ルールで決裁するかなど,その手順やルールを明確にする。
その他取決事項
企業や組織でプロジェクト運営を行うにあたり,事前に承認を受けておくべき情報,ルールなどがあればプロジェクト憲章に承認を受けておく。
付録/附属書
プロジェクト憲章に記載されている内容をサポートする資料類を付録としてつける。
承認
プロジェクト憲章はしかるべき決裁者の承認が必要となる。
一般的にはプロジェクトスポンサーの承認が最低限必要になる。
改訂履歴
改訂履歴の項目を設け,バージョン情報,改定日,作成者,変更内容などを明確にし,最新のプロジェクト憲章はどれなのかを識別できるようにする。
プロジェクト憲章の発行目的
プロジェクト憲章は,プロジェクトを公式に認可させるために発行する。
プロジェクトマネジメントにおけるプロジェクト憲章の説明
プロジェクトマネジメントにおけるプロジェクト憲章は,プロジェクトを正式に許可する文書であって,プロジェクトマネージャを特定して適切な責任と権限を明確にし,ビジネスニーズ,目標,期待される成果などを明確にした文書である。
プロジェクト憲章を作成する知識エリアのプロセス群
PMBOK において,プロジェクト憲章は,知識エリア「プロジェクト統合マネジメント」のプロセス群「立上げプロセス群」で作成する。
過去問題
令和2年度 プロジェクトマネージャ試験 午後Ⅰ 問題 問1
「デジタルトランスフォーメーション(DX)推進におけるプロジェクトの立ち上げ」に関する記述について,答える問題である。CDO(Chief Digital Officer)から全社に向けて,自動化プロジェクトのプロジェクト憲章を発表することにした狙いについて問われている。
プロジェクト憲章を発表することにした狙いは「プロジェクトの承認を全社に伝え協力体制を確保するため」である。
参考文献
- IT 用語辞典 e-Words
- 伊藤 大輔「ポイント図解 プロジェクトマネジメントの基本が面白いほど身につく本」
- 令和2年度 プロジェクトマネージャ試験 午後Ⅰ 問題 問1「デジタルトランスフォーメーション(DX)推進におけるプロジェクトの立ち上げ」
更新履歴
- 2023年10月23日,参考文献に『IT 用語辞典 e-Words』を追加
- 2023年8月14日,参考文献に令和2年度 プロジェクトマネージャ試験 午後Ⅰ 問題 問1「デジタルトランスフォーメーション(DX)推進におけるプロジェクトの立ち上げ」を追加
- 2023年9月8日 アイキャッチ画像を追加
“プロジェクト憲章” に対して1件のコメントがあります。