プロジェクトのステークホルダ

ステークホルダは，日本語では「利害関係者」と呼ばれ，ISO 21500:2012 では，次のように定義されている。

プロジェクトの任意の局面に利害関係をもつか，影響を及ぼすか，影響されるか，又は影響されると自覚する人，グループ又は組織

（出典）ISO 21500:2012

なお，ISO 21500 は，「プロジェクトマネジメントの概念およびプロセスに関する包括的な手引きを提供する」ものとして，2012 年に策定されたプロジェクトマネジメントに関する国際標準である。

ステークホルダのマネジメント

PMBOK ガイド 第 6 版によると，ステークホルダのマネジメントには，次の 4 つのプロセスが定義されている。

なお，PMBOK ではプロジェクト・ステークホルダ・マネジメントは，以下のように定義されている。

プロジェクトに影響を与えたり，プロジェクトによって影響を受けたりする可能性がある個人やグループまたは組織を特定し，ステークホルダの期待とプロジェクトへの影響力を分析し，ステークホルダがプロジェクトの意思決定や実行に効果的に関与できるよう適切なマネジメント戦略を策定するために必要なプロセスからなる。

（出典）PMBOK 第 6 版

ステークホルダの特定

プロジェクトのステークホルダーを定期的に特定し，プロジェクト成功への関心事，関与，相互依存，影響，および潜在的影響に関連する情報を分析し，文書化するプロセス

PMBOK での定義におけるプロジェクトとステークホルダの関係は，以下のとおり。

供給者

供給者は，プロジェクトに資源を供給することで，プロジェクトに対して寄与する。

プロジェクトスポンサ

プロジェクトスポンサは，プロジェクトを許可し，経営的決定を下し，プロジェクトマネージャの権限を越える問題及び対立を解決する。

プロジェクト運営委員会又は役員会

プロジェクト運営委員会又は役員会は，プロジェクトに上級レベルでの指導を行うことによってプロジェクトに対して寄与する。

プロジェクトマネジメントオフィス

プロジェクトマネジメントオフィスは，ガバナンス，標準化，プロジェクトマネジメントの教育訓練，プロジェクトの計画及びプロジェクトの監視を含む多彩な活動を遂行することがある。

プログラムマネージャ

プログラムマネージャは，関連するプロジェクトの調和がとれるように，個々のプロジェクトの支援や指導をする。

納入者

納入者は，プロジェクトが創造するプロダクトやサービスを使用する。

ステークホルダ・エンゲージメントの計画

プロジェクトに影響を与える人・グループ・組織を特定して，影響度や関心を分析して，ステークホルダーがプロジェクトへ関与することを促すための戦略を策定するプロセス

ステークホルダ・エンゲージメントのマネジメント

ステークホルダーのニーズや期待に応え，課題に対処し，ステークホルダーの適切な関与を促すためにステークホルダーとコミュニケーションをとり，協働するプロセス

なお，ステークホルダ・エンゲージメントのマネジメントには，次の活動が含まれる。

• ステークホルダーをプロジェクトの適切な段階で関与させ，プロジェクトの成功へのステークホルダーの継続的なコミットメントを獲得し，確認し，または維持する。
• 交渉やコミュニケーションを通してステークホルダーの期待をマネジメントする。
• ステークホルダー・マネジメントに関連するリスクや潜在的な懸念に対処し，ステークホルダーから提示され得る将来の課題を予測する。
• 特定された課題を明確にし，解決する。

ステークホルダ・エンゲージメントの監視

エンゲージメント戦略と計画の改訂を通して，プロジェクトのステークホルダーとの関係を監視し，ステークホルダーの関与のための戦略をテーラリングするプロセス

ステークホルダ登録簿

ステークホルダ特定と分析が終わったら，それらの結果をステークホルダ登録簿としてしっかりと明文化しておく。

明文化したステークホルダ登録簿には，ステークホルダの氏名や評価情報（プロジェクトへの影響度，姿勢）などを記載する。

ステークホルダマッピング

ステークホルダの持つ影響度（プロジェクトの成果に影響を及ぼす度合い）と関与度（プロジェクトへの積極的な関与の度合い）を分析し，それぞれ，高・中・低の 3 段階に分類して，影響度と関与度をグリッド上に表現する方法がある。

同様に，ステークホルダの権限レベルや関心度を分析し，その中の二つの尺度でマッピングする場合もある。

関与度マトリックス

ステークホルダの現在の関与度と，望まれる関与度との比較を示すことができる。関与度のレベルは，次の 5 段階に分類できる。

• 不認識・・・プロジェクトも潜在的影響も認識していない
• 抵抗・・・認識はししているが，プロジェクトで生じる変化に抵抗。プロジェクトは不支持。
• 中立・・・認識はしているが，プロジェクトには賛成でも反対でもない。
• 支持・・・プロジェクトを支持している。
• 指導・・・プロジェクト達成のために積極的に取り組んでいる。

参考文献

• JIS Q 21500:2018（プロジェクトマネジメントの手引）

更新履歴

• 2022年7月31日　新規作成
• 2023年9月8日　アイキャッチ画像を追加
• 2023年9月17日　PMBOK 第 6 版のプロジェクト・ステークホルダ・マネジメントの定義を追加