プロジェクトの実行

プロジェクトマネージャ試験のシラバス - 情報処理技術者試験における知識・技能の細目 - Ver. 6.0 の大項目「3 プロジェクトの実行」についての記述である。

3-1 プロジェクト作業の指揮

承認されたプロジェクト成果物の開発に向けて,プロジェクト計画及びプロジェクトマネジメント計画に定義したプロジェクト作業の遂行をマネジメントする。

プロジェクトの実行におけるスコープ,スケジュール,資源利用,コスト,品質,組織運営,要員,調達,リスクについて,個別的にも全体的にも円滑に推移するようプロジェクト作業を指揮する。

プロジェクトの環境の急激な変化や高い不確実性を伴う場合は,プロジェクトチームの構成員全員が自律的に貢献することでプロジェクトを成功に導けるようなリーダシップが必要である。

プロジェクト作業のパフォーマンスを測定する尺度は,作業によって顧客にサービスを提供した結果の評価,価値の創成に寄与した度合いなど,プロジェクトの特徴や目的に応じて設定する。

プロジェクト内の様々な技術的,運営管理的及び組織的な問題に対処して計画したプロジェクト活動を遂行する。

3-2 ステークホルダのマネジメント

ステークホルダの要求事項及び期待を適切に理解し,ステークホルダの関心事を特定して課題を解決する。

プロジェクトマネージャがステークホルダの課題を解決できないときには,課題の処理をプロジェクト組織におけるより上層の管理者に嘆願(エスカレーション)するか又は外部の支援を引き出す。

顧客の要求事項を確実にかつ迅速に満たすには,最も影響の大きいステークホルダと積極的にコミュニケーションすることが必要である。これによって,優先順位の高い課題を解決して,より多くのステークホルダの高い関与を促すようにマネジメントする。

ステークホルダ及びステークホルダがプロジェクトに与える影響を詳細に分析して,優先順位を付けたステークホルダのマネジメントの計画を作成する。

3-3 プロジェクトチームの開発

継続的にプロジェクトチームの構成員のパフォーマンス及び相互関係を改善し,プロジェクトチームの意識を統一して,活力と主体性のあるプロジェクトチームを開発する。さらに,プロジェクトチームとチーム構成員のパフォーマンス及び相互関係を改善するように必要な教育・訓練にコストと時間を投入する。また,チーム構成員の心身の健康を管理する。

チームとしてパフォーマンスを継続して改善するためには,個々の構成員が得意分野を持ち,かつ広い範囲の作業がこなせるように育成する必要がある。これによって構成員は,チームのパフォーマンスを向上させるスキルを持ち,相互信頼をベースとして自律的にプロジェクトをマネジメントできるようになる。また,顧客にサービスを提供するために必要となる全てのスキルを一つのチーム内に備えることを目指すことも必要になる。

適切な行動の基本原則を,プロジェクトの早い時期に確立することで,誤解及び対立を最小限にとどめることができる。

3-4 リスクへの対応

プロジェクトの目標の達成にプラスの影響を与えることのある潜在的リスク(機会)を増やして,マイナスの影響を与えることがある潜在的リスク(脅威)を減らすために,選択肢を作成して対策を決定する。プロジェクトの環境の急激な変化や高い不確実性を伴う場合には,プロジェクトの進捗に伴い繰り返しリスクへの対応の結果を評価して,再度リスクの特定,リスクの評価を経て対策の内容を更新する。

資源を投入して活動するために,予算とスケジュールに必要な処置を施してリスクに対応する。リスクへの対応は,そのリスクにとって適切であり,費用対効果が高く,タイムリで現実的であり,ステークホルダに理解され,適正な要員に割り当てられるようにする。

また,リスクへの対応の優先順位を定めてその作業量を見積もり,それをスケジュールに盛り込む。さらに,リスク発生時のコンティンジェンシ計画(緊急時対応計画)やその発動条件を規定する。

脅威のリスクへの対応には,リスクの回避,軽減,転嫁又はリスクを受容してそのリスクが発生したときに使用するコンティンジェンシ計画の作成の判断が含まれる。

3-5 品質保証の遂行

品質要求事項を満たすために,プロジェクトの進捗に伴って成果物及びプロジェクトのレビューなどを行い,品質の計画を実施する。

品質保証の遂行には,品質要求事項を満たすために必要なプロセス,ツール,手順,技法及び資源の使用を確実にすることを含む。

顧客の満足度を高める価値の創成に向けてシステムを頻繁にリリースする場合,リリースの都度,品質保証の活動の結果を評価して,次のリリースに向けての品質の計画の内容を見直す。

品質の計画の未実施,品質要求事項の未達成の場合,対策を立案し欠陥を除去するなどの品質の改善を図る。また,必要ならば構成管理について変更管理の手続で是正処置を講ずる。

品質保証の手順の改善が必要な場合には,品質の計画の変更管理の手続に向けて変更要求を決定する。

3-6 供給者の選定

システム開発要員,製品,サービスを外部の組織から調達する際に,供給者から情報を入手して,提出された全ての情報をレビューし,審査して,プロジェクトの条件に最適な供給者を選定する。

調達仕様書,要求事項に照らして契約の種類,検収条件を確定し,契約書又は注文書,及び選定された推奨供給者リストとして文書化する。

情報提供,提案,応札又は契約条件の提示に関する依頼はそれぞれの目的が異なるが,依頼には,目的及び提出期限とともに,提供される文書のスコープ,体裁,品質,数量などの詳細な説明を含める。

各供給者の応札の評価は,選択した評価基準に従って実施し,最も適切かつ有益な応札とみなせるものを最終的に選択する。

供給者の選定から最終契約条件を合意するまでに,供給者に対しては双方のリスクを抑制する姿勢で契約交渉を行う。

3-7 情報の配布

コミュニケーションの計画で定めたように,プロジェクトのステークホルダに対して要求した情報を利用可能にし,また情報に対する予期せぬニーズに対応する。

プロジェクトの環境の急激な変化や高い不確実性を伴う場合には,これらによる影響や課題をできるだけ早く明確にして組織内及び組織を超えた情報の透明性を維持する必要がある。

配布情報は,報告会の開催などによってプロジェクトの状況を正確かつ適切に伝え,情報に対するステークホルダのニーズを満たすようにマネジメントする。

スコープ,品質,コスト,スケジュール,リスクなどの実際のパフォーマンスと計画したパフォーマンスの差異を中心に,差異の今後の見通し,発生した問題の解決状況,変更要求への対応結果を重点報告事項とする。情報の透明性を維持するために,会議やレビューに広くステークホルダの参加を要請したり,プロジェクトの成果物を公開の場に掲示したりする。

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