ソフトウェア製品及びコンピュータシステムの品質特性

ソフトウェア製品及びコンピュータシステムの特徴は,特別の利用状況において,製品品質を決定する。

機能適合性,性能効率性,使用性,信頼性及びセキュリティは,一次利用者の利用時の品質に大きな影響を及ぼす。性能効率性,信頼性及びセキュリティは,これらの領域を専門とする他の利害関係者にも,特定の関係があることがある。

互換性,保守性及び移植性は,システムを保守する二次利用者の利用時の品質に大きな影響を及ぼす。

機能適合性 (functional suitability)

明示された状況下で使用するとき,明示的ニーズ及び暗黙のニーズを満足させる機能を,製品又はシステムが提供する度合い。

注記
  • 機能適合性は,機能仕様にではなく,機能が明示的ニーズ及び暗黙のニーズを満足させるかどうかにだけ関係している

性能効率性 (performance efficiency)

明記された状態(条件)で使用する資源の量に関係する性能の度合い。

注記
  • 資源は,他のソフトウェア製品,システムのソフトウェア及びハードウェア構成,並びに材料(例えば,印刷用紙,貯蔵媒体)を含むことができる。
  • その他の特性の定義にあってこの特性の原文に落ちている“degree to which《度合い》”を補足して翻訳した。

互換性 (compatibility)

同じハードウェア環境又はソフトウェア環境を共有する間,製品,システム又は構成要素が他の製品,システム又は構成要素の情報を交換することができる度合い,及び/又はその要求された機能を実行することができる度合い。

使用性 (usability)

明示された利用状況において,有効性,効率性及び満足性をもって明示された目標を達成するために,明示された利用者が製品又はシステムを利用することができる度合い。

注記
  • 使用性は,副特性,すなわち,製品品質特性として明示し若しくは測定するか,又は利用時の品質の部分集合である測定量によって直接的に明示し若しくは測定できる。

信頼性 (reliability)

明示された時間帯で,明示された条件下に,システム,製品又は構成要素が明示された機能を実行する度合い。

注記
  • ソフトウェアでは,摩耗は起こらない。信頼性の限界は,要求事項,設計及び実装での障害が原因である。また,(利用)状況の変化が原因である。
  • ディペンダビリティ特性には,可用性及びその固有の要因又は外部の影響する要因[例えば,可用性,信頼性(障害許容性及び回復性を含む。),セキュリティ(機密性及びインテグリティを含む。),保守性,耐久性,保守支援]を含む

ソフトウェア製品及びコンピュータシステムの信頼性の副特性には,成熟性,可用性,障害許容性(耐障害性),回復性がある。

成熟性 (maturity)

通常の運用操作の下で,システム,製品又は構成要素が信頼性に対するニーズに合致している度合い。

注記
  • 成熟性の概念は,通常の運用操作の下で要求されたニーズに成熟性以外の品質特性が合致している度合いを示すために成熟性以外の品質特性に適用することもできる。

可用性 (availability)

使用することを要求されたとき,システム,製品又は構成要素が運用操作可能及びアクセス可能な度合い。

注記
  • 外面的には,可用性は,システム,製品又は構成要素が作動状態でいる間の合計時間の割合で総合評価することができる。それゆえ,可用性は,(故障の頻度を左右する)成熟度,障害許容性(耐故障性)及び(各故障後の停止時間を左右する)回復性との組合せである。

障害許容性(耐障害性) (fault tolerance)

ハードウェア又はソフトウェア障害にもかかわらず,システム,製品又は構成要素が意図したように運用操作できる度合い。

回復性 (recoverability)

中断時又は故障時に,製品又はシステムが直接的に影響を受けたデータを回復し,システムを希望する状態に復元することができる度合い。

注記
  • 故障に伴い,コンピュータシステムが一定の時間停止することが時々あるが,そのシステムの回復性によって,停止時間は決まる。

セキュリティ (security)

人間又は他の製品若しくはシステムが,認められた権限の種類及び水準に応じたデータアクセスの度合いをもてるように,製品又はシステムが情報及びデータを保護する度合い。

注記
  • 蓄えられたデータ又は製品若しくはシステムによって蓄えられたデータと同じように,セキュリティは送信中のデータにも適用する。
  • 生存性(survivability)(攻撃が存在するにもかかわらず,時期を逃さずに,必須のサービスを提供することによって,その使命を製品又はシステムが満たし続ける度合い。)は,回復性によって取り扱われる。
  • 免疫性(immunity)(製品又はシステムが攻撃に耐える度合い)は,インテグリティによって取り扱われる。
  • セキュリティは,信用性に貢献する。

保守性 (maintainability)

意図した保守者によって,製品又はシステムが修正することができる有効性及び効率性の度合い。

注記
  • 修正には,環境における変更,並びに要求事項及び機能仕様における変更に対するソフトウェアの訂正,改良又は適応を含むことができる。修正には,特別の支援要員によって実施される修正,及び事業要員,運用要員又はエンドユーザによって実施される修正を含む。
  • 保守性には,更新機能及び向上機能の実装を含む。
  • 保守性は,保守活動を手助けするための製品若しくはシステムの固有の能力,又は製品若しくはシステムを保守する目標に対して保守者が経験する利用時の品質のいずれか一方として,説明することができる。

移植性 (portability)

一つのハードウェア,ソフトウェア又は他の運用環境若しくは利用環境からその他の環境に,システム,製品又は構成要素を移すことができる有効性及び効率性の度合い。

注記

移植性は,移植活動を容易にするための製品若しくはシステムの固有の能力,又は製品若しくはシステムを移植する目標を経験した利用時の品質のいずれかとして解釈できる。

参考文献

  • JIS X25010:2013,「システム及びソフトウェア製品の品質要求及び評価(SQuaRE)−システム及びソフトウェア品質モデル」,”Systems and software engineering-Systems and software Quality Requirements and Evaluation (SQuaRE)-System and software quality models”

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