ディジタル技術を活用した業務プロセスによる事業課題の解決

令和元年度 秋期 IT ストラテジスト試験 午後Ⅱ 問題 問1「ディジタル技術を活用した業務プロセスによる事業課題の解決」についてである。

問題文

今日,ディジタル技術を活用した業務プロセスによって多くの事業課題の解決が可能となった。IT ストラテジストは,ディジタル技術を活用して効率化できたり,品質の向上が図られたりする業務を特定し,業務プロセスにディジタル技術を活用することによって,事業課題の解決を実現することが重要である。このような例としては次のようなものがある。

病院において,看護師が看護に専念できる時間をより多く確保するという事業課題に対し,看護に直接関わらない業務を特定し,その中で記録業務プロセスに音声認識装置と AI の活用を図った。これによって看護師は迅速に記録業務を行うことが可能となり,看護に専念する時間が増え,事業課題を解決した。

組立加工業において,経験の浅い作業者でも熟練作業者と同等の作業水準を達成するという事業課題に対し,熟練作業者が行っていた組立業務プロセスと AR 機器と IoT の活用を図った。これによって熟練作業者と同等の作業水準が達成され,事業課題を解決した。

ディジタル技術を活用した業務プロセスの実現性の担保に当たっては,ディジタル技術の機能,性能,信頼性などを検討することが必要であり,先行事例の調査や実証実験が重要である。IT ストラテジストは,ディジタル技術を活用した業務プロセスが,事業課題の解決にどのように解決するかについて,投資効果を含めて事業部門に説明する必要がある。

あなたの経験と考えに基づいて,設問ア~ウに従って論述せよ。

設問ア

あなたが携わったディジタル技術を活用した業務プロセスによる事業課題の解決において,解決しようとした事業課題及びその背景について,事業概要,事業特性とともに 800 字以内で述べよ。

設問イ

設問アで述べた事業課題の解決に当たり,あなたはどのようなディジタル技術を活用し,どのような業務プロセスを実現したか,その際に実現性を担保するためにどのような検討をしたか,800 字以上 1,600 字以内で具体的に述べよ。

設問ウ

設問イで述べたディジタル技術を活用した業務プロセスが事業課題の解決に貢献することについて,あなたが事業部門に説明した内容は何か。また,事業部門から指摘されて改善した内容は何か。600 字以上 1,200 字以内で具体的に述べよ。

論文案

第1章 解決しようとした事業課題及びその背景

1.1 事業概要と事業特性

 私が送配電事業を営む会社の事業部門の担当者として,変電設備の修繕・取替等の課題を解決するディジタル技術を活用した業務プロセスの提案を行った事例について述べる。

 送配電事業は電力を安定に供給する使命があり,電力供給に不可欠である変電設備においても,定期的に修繕・取替等を行う必要がある。

 変電設備の修繕・取替等の工事を行う場合には,当該設備の停止はもちろんのこと,周囲の設備を停止して工事を実施することが原則である。しかし,さまざまな制約により,周囲の設備停止は容易に計画することはできない。そのため,変電設備の修繕・取替等の工事は,周囲の設備が充電している中で実施する必要がある。工事実施中,万一,充電部に触れた場合,労働災害の危険があるだけでなく,広範囲の停電を引き起こす可能性もある。

 よって,工事を行う前に,充電部からの離隔については,十分に確認しておく必要がある。平面図や立面図を参照しながら,充電部からの離隔距離が確保されているか確認するが,大きな業務負担となっている。また,設計において離隔距離が確保されていると誤って判断し,現地作業に着手した場合,現地でそれに気付き,工事が中断してしまうという事例も過去に発生している。

1.2 事業課題とその背景

 変電設備の修繕・取替等の工事設計の業務負担を軽減することが課題となっている。その背景として,経済成長に応じて整備されてきた変電設備の高経年化に伴う修繕・取替等の対応が増大しているためである。

 現状の業務のやり方や体制では高経年化対策の工事物量に対応できないため,ディジタル技術を活用した業務プロセスによる事業課題の解決が求められている。

第2章 ディジタル技術を活用した業務プロセス

2.1 活用したディジタル技術

 変電設備の修繕・取替等の工事の業務を効率化するという事業課題の解決に当たり,3次元レーザースキャナーにより変電所構内の計測を行い,3次元点群データを取得し,それを活用する方法を検討した。

 変電所構内の3次元点群データを用いることで,以下の点で変電設備の修繕・取替等の工事設計業務の効率化が実現できると考えられる。

  • 3次元レーザースキャナーによる計測を行えば,工事の設計業務に必要な情報は網羅される。これまで,平面図や立面図ではわからない情報を取得するため,変電所に出向して調査を行っていたが,その出向回数は削減できる
  • 3次元点群データを活用することで,変電所の構内を立体的に把握することが可能となる。従来,平面図や立面図を参照しながら行っていた充電部からの離隔距離確保の検討が短時間で行えるようになるとともに,検討の品質が向上することが期待される。

2.2 実現性を担保するための検討

 3次元レーザースキャナーは土木工事において使用されている事例は報告されていたが,変電所構内で使用した事例はなかった。変電所構内には機器のような大きな構造物だけでなく,電線のような細い構造物や鉄構を構成する薄い構造物があるため,3次元レーザースキャナーでそれを捕捉できるか検証する必要があった。

 そこで,ある変電所の構内で3次元レーザースキャナーによる計測を行い,取得した3次元点群データが前述の効率化に活用できるか検証することにした。

 検証においては,土木工事で3次元レーザースキャナーを行ったことがある委託先を選定し,計測を委託した。実際に取得した3次元点群データで上記の効率化が実現できる見通しが得られたものの,3次元レーザースキャナーを行う工数が多いことが判明した。

 3次元レーザースキャナーを短時間で行う方法がないか,委託先に相談したところ,変電所構内でドローンを飛ばし,3次元レーザースキャナーを行うことで,より短時間で計測を行うことができると提案された。

第3章 事業部門に説明した内容と改善

3.1 事業部門に説明した内容

 3次元レーザースキャナーにより変電所構内の3次元点群データを取得し,変電設備の修繕・取替等の工事設計に活用することで,業務効率化を実現できることを説明した。ある変電所で3次元点群データを取得し,効率化に活用できる見通しを得ていることを説明することで,提案は了承された。

 一方,3次元レーザースキャナーによる計測時間が長いことが課題であるが,計測を短時間で行うための手段として,変電所構内でドローンを飛行させ,3次元レーザースキャナーを行う方法があることを説明した。

3.2 事業部門から指摘されて改善した内容

 変電所構内でドローンを飛行させた事例はなく,万一,ドローンが制御不能になり,充電部に接触してしまうと,供給支障に至る可能性があると指摘された。

 一方,変電所構内の3次元レーザースキャナーを短時間で行わなければ,データ取得費用が高くなるため,3次元点群データを活用した効率化の費用対効果が見込めないことがわかっており,ドローン以外の方法で,3次元レーザースキャナーによる計測の工数削減が必要である。

 3次元レーザースキャナーの活用事例を調査したところ,乗用車に3次元レーザースキャナーを搭載するモービルマッピングシステム(MMS)が実用化されていることがわかった。一方,変電所構内には乗用車が通行できる箇所はあるものの,人間しか歩行できない箇所が多く,変電所構内で MMS をそのまま採用することは難しいと考えられた。

 そこで,変電所構内でも移動に使える台車に3次元レーザースキャナーを搭載し,その台車を動かし,変電所構内の3次元測量を行う方法を考案した。

 考案した方法により,ドローンほどではないものの,短時間で変電所構内の3次元レーザースキャナーを行うことができ,3次元点群データを活用した効率化の費用対効果が十分に得ることができた。

 現在,変電設備の修繕・取替等の工事設計の業務負担を軽減するため,工事の計画段階で3次元レーザスキャナーによる計測を行い,3次元点群データを活用している。

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