IT を活用した業務改革

平成26年度 秋期 IT ストラテジスト試験 午後Ⅱ 問題 問1「IT を活用した業務改革」についてである。

問題文

近年は,IT の進展によって,事業課題に対して IT を積極的に活用し,新たな事業・サービスを展開することが可能になっている。このような中,IT ストラテジストは,事業部門と協力して,IT を活用した業務改革を実施することによって,事業・サービスの優位性確保,新規顧客の獲得などの事業課題に対応することが求められている。

IT を活用した業務改革には,例えば,次のようなものがある。

  • 外勤業務サービスの差別化のために,営業員,サービス員にタブレット端末などのスマートデバイスを配備し,業務進捗状況の迅速な確認,顧客別情報の適時適切な提供などの業務改革を行い,顧客対応時間の増加,顧客サービスの強化を推進する。
  • 店舗の売上げ拡大のために,内部の POS 情報,外部の SNS・ブログの情報を活用した顧客の購買傾向の分析と的確な品ぞろえ,対象を絞り込んだ顧客への情報発信などの業務改革を行い,販売機会の創出,顧客の囲い込みを推進する。
  • 物流サービスの優位性確保のため,配送車両に GPS 端末と各種センサを配備し,位置確認,道路情報に基づく配送経路の柔軟な変更,顧客への的確な情報提供などの業務改革を行い,顧客満足度の向上,物流サービスの品質向上を推進する。

IT ストラテジストは,IT を活用した業務改革を実施する際,事業課題に関連する業務の現状と将来見通し,複数の改革案と各案の効果の比較,活用する IT の費用などを検討し,定量的な費用対効果の根拠を示して経営者に説明することが重要である。

あなたの経験と考えに基づいて,設問ア~ウに従って論述せよ。

設問ア

あなたが携わった,IT を活用した業務改革について,業務改革の背景にある事業課題を,事業の概要,特性とともに,800 字以内で述べよ。

設問イ

設問アで述べた事業課題に対応するために,実施した業務改革とそのときに活用した IT,及び費用対効果の定量的な根拠とそのときに検討した内容について,800 字以上 1,600 字以内で具体的に述べよ。

設問ウ

設問イで述べた業務改革の実施結果は,経営者にどのように評価されたか。更に改善する余地があると考えている事項を含めて,600 字以上 1,200 字以内で具体的に述べよ。

論文案

第1章 業務改革の背景にある事業課題

1.1 事業の概要,特性

 一般送配電会社の事業部門で,業務改革とDXを推進するチームの担当者として,図面管理システム開発を企画し,導入した事例について述べる。

 送配電事業においては,送配電設備の保全・工事業務がメインであり,それに関わるコストは大きい。保全・工事業務を行うには,設備の図面が不可欠である。これまで,図面は紙媒体で保管されており,設備保全を担う部署が紙媒体の図面を管理していた。

 図面は設備保全を担う部署の事務所だけではなく,送配電設備のトラブル等に迅速に対応できるよう,複製した紙媒体の図面を変電所等の現場にも配備されている。

 送配電設備の工事を施工する社外の協力会社に図面を貸し出し,協力会社は設備工事に伴い,図面を修正し,返却することもある。協力会社は,設備保全を担う部署まで出向き図面を借用し,協力会社に持ち帰り,図面を修正した後,再び設備保全を担う部署まで出向き図面を返却していた。

1.2 業務改革の背景にある事業課題

 送配電事業は,公益性が高いことから,事業を効率的に運営し,コストを低減することが求められている。これにより,低廉な託送料金を維持することで,電気を利用する人の満足度を高めることができる。

 我が国の労働人口が減少していくことを見据えて,送配電会社やその協力会社においても,生産性向上を図り,少ない人員でも事業を継続していく必要がある。

 また,新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえて,在宅勤務や分散勤務など働き方改革の必要性も高まっている。しかし,設備の図面は紙媒体で管理されていることから,在宅勤務や分散勤務導入へのハードルとなっている。

第2章 実施した業務改革

2.1 実施した業務改革とそのときに活用した IT

 送配電設備の保全・工事業務を行うために必要な図面を管理するシステムを開発する。このシステムは,以下,図面管理システムと称する。

 図面管理システムには,送配電会社の従業員だけではなく,社外の協力会社にもアクセス可能とすることで,後述する効率化が実現できるため,クラウド上に開発した。

 送配電設備の保全・工事業務を担う従業員には,タブレット端末などのスマートデバイスを配備した。そのスマートデバイスからも,図面管理システムにアクセス可能とすることで,どこでも設備の図面を迅速に確認することができるようになる。

2.2 費用対効果の定量的な根拠

 費用対効果を定量的に示すため,費用と効率化効果の洗い出しを行った。

(1)費用の洗い出し

 費用は以下の費用を算出する。

  • 図面管理システムの開発費用
  • 図面管理システムの運用費用(システムを設置するクラウドの利用料)
  • タブレット端末の導入費用(端末購入費用,初期設定費用)
  • タブレット端末の運用費用(通信料)
  • 紙媒体の図面を電子化するコスト
(2)効率化効果の洗い出し

 効率化効果は,省力化できる業務の時間を算出し,それを金額に換算する。

  • 事務所や現場に保管している図面の差し替え等の省力化
  • 社外の協力会社へ図面貸出し・返却の省力化
  • 設備保全を担う部署以外の従業員が図面を確認するときの省力化

2.3 検討した内容

 タブレット端末などのスマートデバイスは,図面管理以外にも活用できることから,タブレット端末の導入・運用費用には,一定の比率を乗じることにした。その比率は,タブレット端末の導入により期待できる効率化効果のうち,図面管理に関わる効率化効果の占める率とした。

 図面管理システムを導入することで,期待できる効率化効果は大きいが,紙媒体の図面を電子化するハードルがある。図面管理システムの法定耐用年数5年以内に,投資を回収できるよう図面電子化をシステム導入後3年以内に行うよう目標を設定した。

第3章 業務改革の実施結果に対する経営者の評価

3.1 経営者の評価

 図面管理システムを導入することにより,送配電会社だけでなく,社外の協力会社の省力化を実現できることを説明したところ,以下の点から高い評価を得た。送配電事業を継続していくためには,社外の協力会社の施工力は不可欠であり,ともに生産性向上を追い求めていかなければならない。

 これまで,設備図面を修正した後の差し替え漏れに起因する設備のトラブルをいくつも経験している。図面管理をシステム化することで,差し替え漏れを防ぐことができるのため品質向上につながる。定量的な費用対効果に含めることはできないが,定性的な効果も示してほしい。それにより,図面管理システムを活用するモチベーションを高めることができる。

 図面管理システム導入後,紙媒体の図面の電子化の進捗状況について聞かれたが,それを把握していなかったため,導入後のチェック・アクションも行うよう指示があった。

3.2 更に改善する余地

 紙媒体の図面電子化の進捗を確認したところ,目標として設定したペースを下回っている部署が多いことがわかった。それらの部署にヒアリングしたところ,図面管理システム導入するメリットが十分に伝わっていないことがわかった。

 設備保全を担う部署に図面管理システムを導入するメリットを理解してもらうため,経営者から指導された,図面管理システム導入の定性的な効果の整理を行った。

 定量的効果だけでなく,定性的な効果を事業所に説明し,図面管理システム導入するメリットを理解してもらい,紙媒体の図面を電子化を進めていく必要がある。

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