キャパシティ管理プロセス

IT サービスマネジメントのキャパシティ管理について説明する。

容量・能力管理(キャパシティ管理)

キャパシティとは,備わっている最大の容量や能力をいい,ハードウェアやソフトウェアの量や性能に左右される。キャパシティが不足していれば,負荷が大きくなったときにさまざまな不具合が生じる。逆にキャパシティが過多であっても,システムは不必要に高価となり顧客に受け入れてもらえない。容量・能力管理では,そのような「バランスをとる」ことがとても重要になる。

容量・能力管理では,バランスを考慮しながら,現在や将来のビジネスニーズに適合する適切なキャパシティを設定・維持するための活動を行う。

  • リソースとコストのバランス:ビジネスニーズから見た処理キャパシティ(供給能力)とコストのバランス
  • 需要と供給のバランス:需要と処理キャパシティとのバランス

キャパシティ管理における三つの重点分野

IT サービスマネジメントのキャパシティ管理における三つの重点分野には,事業,サービス,コンポーネントがある。

事業キャパシティ管理

事業戦略やトレンドの分析を行うことで,将来の事業要件がどのように変化し,どのように IT が利用されていくのかを把握し,それに見合ったキャパシティを計画し実現する。これは,将来にわたって必要なキャパシティを提供するためのプロアクティブ(事前対処的)な活動である。

事業のキャパシティ管理の管理指標として売上高がある。

サービスキャパシティ管理

サービスのパフォーマンスや最大負荷を計測・監視・分析することで,それらのサービスが SLA の水準を達成しているかどうかを把握し,そのギャップを埋めるためのキャパシティを計画し実現する。

サービスのキャパシティ管理の管理指標としてトランザクション応答時間がある。

コンポーネントキャパシティ管理

サービスを提供する IT インフラストラクチャの個々のコンポーネント(リソース)の容量や利用状況がどのように変化していくかを把握し,それに見合ったキャパシティを計画し実現する。

コンポーネントのキャパシティ管理の管理指標として CPU 利用率がある。

キャパシティ監視

オンラインシステムの容量・能力の利用の監視についての注意事項は,応答時間や CPU 使用率などの複数の測定項目を定常的に監視する。

キャパシティ管理では,サービスにどの程度のリソースやパフォーマンス(機能)が必要となるかを将来を見据えて管理する。リソースには,CPU やメモリといったシステム的なものだけでなく,人的リソースや工数管理も含まれる。

キャパシティ管理のモデル化

キャパシティ管理においては,将来のコンポーネント,サービスのキャパシティ,パフォーマンスなどを予想するが,その予想にあたっては,さまざまな方法でモデル化を行う。モデル化は,次の 4 段階で行われる。

第 1 段階:ベースラインのモデル化

現在達成されているパフォーマンスを正確に反映するベースライン・モデルを作成する作業である。この作業によって,起こりうる障害や変更の結果の精度が信頼できるものになる。

第 2 段階:傾向分析

キャパシティ管理プロセスによって収集されたリソースの利用状況やサービスのパフォーマンスについて,傾向分析や予測を行う。この作業には,スプレッドシート,グラフなどが用いられる。

第 3 段階:分析モデル化

待ち行列理論などの数学的技法を利用して,コンピュータシステムの動作をモデル化する。一般に,分析モデル化では,ソフトウェアパッケージを用いて,コンポーネントの使用率を待ち行列理論に当てはめ,応答時間などを予測する。

第 4 段階:シミュレーションのモデル化

任意のハードウェア構成に対して発生するイベントをシミュレーションし,モデル化する。この作業によって,アプリケーションのサイジングや変更における影響に関する精度の高い予測ができる。

容量・能力管理の KPI

容量・能力管理における主要な KPI には,次のものがある。

  • 事業の傾向(ビジネストレンド)に関する正確な予測の割合
  • 事業要件に見合った新しい技術の導入
  • SLA 違反の原因となる,古い技術の減少
  • IT の過剰キャパシティの減少
  • キャパシティ不足による事業中断の減少
  • パフォーマンス不足による SLA 違反の削減率

更新履歴

  • 2024年4月3日 新規作成
  • 2024年4月14日 キャパシティ管理における三つの重点分野に対応する管理指標を追加

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