サービスレベル管理プロセス
サービスレベル管理(SLM : Service Level Management)の最終目標は,現在のすべての IT サービスに対して合意されたレベルを達成すること,そして将来のサービスが,合意された達成可能なサービスレベル目標を満たすように提供されることである。
サービスレベル管理プロセスの活動として,提供するITサービス及びサービス目標を特定し,サービス提供者が顧客との間で SLA(Service Level Agreement)を交わす。
SLA の締結後は,PDCA マネジメントサイクルによってサービスの維持,及び向上を図る活動を行う。
サービスレベル管理プロセスを導入するメリット
ビジネス部門のメリット
ビジネス部門がサービスレベル管理プロセスを導入するメリットを示す。
- ビジネス要件に適したサービスレベル目標値が設置されることで,安定した IT サービスを受けることができ,ビジネスの安定性を向上させることができる。
- サービスレベルがビジネスの重要性と整合しているかを把握することができ,IT サービスの費用対効果が評価しやすくなる。
IT サービス提供部門のメリット
IT サービス提供部門がサービスレベル管理プロセスを導入するメリットを示す。
- ビジネス部門とのコミュニケーションが促進され,ビジネスの要求の正確な把握ができる。
- 定量的にサービスレベルを評価することで,IT サービスのパフォーマンスを客観的に評価することができ,ビジネス部門や経営者に対する説明責任を果たすことができる。
- ビジネスの要求に適した IT サービスの設計・提供が可能となり,不要または過剰な IT サービスを排除することができる。
サービスレベル管理プロセスにおける代表的な管理指標
サービスレベル管理プロセスにおける代表的な管理指標を次表に示す。
関連プロセス | サービスレベル項目 (SLO) | 目標値設定例 |
---|---|---|
サービス全体 | サービス時間 | 月 ~ 金,8:00 ~ 20:00 |
サービスデスク | 平均応答時間 | 20 秒 |
一次窓口回答率 | 60 % | |
インシデント管理 | 平均インシデント検知報告時間 | 10 分 |
平均インシデント解決時間(ランク別) | A(重大) : 5 時間,B(重要) : 1 時間 | |
可用性管理 | サービス時間帯の稼働率 | 95 % |
サービス停止時の平均復旧時間 | 1 時間 | |
キャパシティ管理 | 平均オンライン応答時間 | 5 秒 |
バッチ処理時間遵守率 | 95 % | |
情報セキュリティ管理 | 年間侵入テスト実施回数 | 2 回 |
管理指標としては上記以外にも様々な指標があるが,以下の条件を満たしている必要がある。
- 過剰な負荷をかけることなく,継続的に測定が可能な指標であること
- ビジネス部門が意味を理解でき,ビジネスの効率性や有効性に影響を与える意味のある指標であること
- サービス提供部門が,サービスレベルをコントロールできる指標であること
- サービス提供部門が,目標を達成できる指標であること