業務パッケージを採用した情報システム開発プロジェクト

近年の情報システム開発では,業務プロセスの改善,開発期間の短縮,保守性の向上などを目的として,会計システムや販売システムなどの業務用ソフトウェアパッケージ(以下,業務パッケージという)を採用することが多くなっている。このような情報システム開発では,上記の目的を達成するためには,できるだけ業務パッケージの標準機能を適用する。その上で,標準機能では満たせない機能を実現するための独自の “外付けプログラム” の開発は必要最小限に抑えることが重要である。

プロジェクトマネージャ(PM)は,例えば,次のような方針について利用部門の合意を得た上でプロジェクトを遂行しなければならない。

  • 業務パッケージの標準機能を最大限適用する。
  • 業務パッケージの標準機能では満たせない機能を実現する場合でも,外付けプログラムの開発は必要最小限に抑える。

外付けプログラムの開発が必要な場合には,PM は,開発が必要な理由を明確にし,開発がプロジェクトに与える影響を慎重に検討する。その上で,開発の優先順位に基づいて開発範囲を見直したり,バージョンアップの容易さなどの保守性を考慮した開発方法を選択したりするなどの工夫をしなければならない。

設問

あなたの経験と考えに基づいて,設問ア~ウに従って論述せよ。

設問ア

あなたが携わった情報システム開発のプロジェクトの特徴を,採用した業務パッケージとその採用目的とともに,800 字以内で述べよ。

設問イ

設問アで述べた情報システム開発プロジェクトの遂行に当たり,外付けプログラムの開発が必要となった理由,開発を必要最小限に抑えるために利用部門と合意した内容,合意に至った経緯,及び開発した外付けプログラムの概要を,800 字以上 1,600 字以内で具体的に述べよ。

設問ウ

設問イで述べた外付けプログラムの開発に当たり,業務パッケージ採用の目的を達成するためにどのような工夫をしたか。その結果,及び今後の改善点を含め,600 字以上 1,200 字以内で具体的に述べよ。

出題趣旨

業務用ソフトウェアパッケージ(以下,業務パッケージという)採用の目的には,業務プロセスの改善,開発期間の短縮,保守性の向上などがあるが,業務パッケージの標準機能を最大限適用して,外付けプログラムの開発を必要最小限に抑えることが,これらの目的を達成するためには重要である。

本問は,業務パッケージを採用した情報システム開発に当たり,外付けプログラムの開発を抑えるために利用部門と合意した内容,及び外付けプログラムを開発する際の工夫点を具体的に論述することを求めている。論述を通じて,プロジェクトマネージャとして有すべき業務パッケージの活用に関する知識,プロジェクト運営の実践能力,利用部門と調整する能力などを評価する。

解答案

章立てを考える

  1. プロジェクトの特徴,採用した業務パッケージ
    • 情報システム開発のプロジェクトの特徴
    • 採用した業務パッケージとその採用目的
  2. 外付けプログラムの開発と概要
    • 外付けプログラムの開発が必要となった理由
    • 利用部門と合意した内容
    • 開発した外付けプログラムの概要
  3. 工夫と今後の改善点
    • 業務パッケージ採用の目的を達成するための工夫
    • 成果と今後の改善点

論文案

第1章 プロジェクトの特徴,採用した業務パッケージ

1.1 情報システム開発プロジェクトの特徴

送配電事業を営むA社の事業部門は,設備保全システムの再構築プロジェクトを行なった。この設備保全システムは,約20年前に開発されているため,紙帳票の出力を前提としている。具体的には,設備保全システムより紙帳票を出力し,申請,決裁を紙帳票で行う。紙帳票での決裁後,設備保全システムのステータスを更新する業務プロセスである。再構築においては,保全業務のペーパーレスを志向し,紙帳票を出力を前提としない業務プロセスを目指す。

私は,事業部門のプロジェクトマネージャ(以下,PM)として,このプロジェクトに参加した。

1.2 採用した業務パッケージとその採用目的

設備保全システムの再構築プロジェクトで採用した業務パッケージは,ワークフローシステムである。このワークフローシステムを導入することで,紙帳票による申請,決裁の業務を電子化し,業務プロセスのペーパーレス化を図る。

また,設備保全システムの中でワークフローの仕組みを新たに開発するのではなく,業務パッケージを採用することでワークフローの仕組みを実現する。これにより,設備保全システム再構築の開発期間短縮と開発コスト低減を図る。

第2章 外付けプログラムの開発と概要

2.1 外付けプログラムの開発が必要となった理由

設備保全業務では,毎日,大量の申請・決裁業務が発生する。申請の都度,設備保全システムからワークフローシステムにハンド対応で申請データを連携するのは手間である。また,決裁完了後,設備保全システムの承認ステータスをハンド対応で更新するのも手間である。そこで,設備保全システムとワークフローシステムとの間で,申請データと決裁データを連携する外付けプログラムを開発することにした。

ワークフローシステムで申請・決裁を行う際,何らかの申請フォームが必要となる。そのため,利用者の業務に合わせて申請フォームを外付けプログラムで開発する必要がある。

2.2 利用部門と合意した内容

外付けプログラムの開発を進める前に,開発方針を策定し,利用部門と合意しておくことにした。利用部門長,エンドユーザの代表者に対して,作成した開発方針を説明した。

一つ目は,設備保全システムとワークフローシステムとの間の連携は,原則システムで実現することだ。利用部門長には,システム間連携が実現することで,業務の抜け・漏れが防げることから品質向上につながることをアピールした。エンドユーザには,これまで紙帳票を出力していた場合と比較して,システム連携により業務が効率化できることをアピールした。利用部門長,エンドユーザともにシステム連携の件については,納得してもらえた。

二つ目は,申請フォームのことである。既存帳票毎に申請フォームを作成する場合,開発コストが増加する。また,帳票のレイアウト変更のたびにシステム改修が必要となる。このことから,汎用的な申請フォームを一つだけを作成し,帳票の電子データを申請フォームに添付する方法を提案した。利用部門長は,開発・運用コストが抑えられることから異議はなかった。一方,エンドユーザにとっては,帳票の確認するためには,申請・決裁の都度,電子データを開く必要があり不便という意見もあった。それでも,設備保全システムから紙帳票を出力し,申請・決裁業務を行う場合に比べて効率的であることを訴求した。また,今回の開発では汎用的な申請フォームのみを開発するが,運用開始後,申請数の多い帳票については,費用対効果を見極めた上で,申請フォーム作成を実施する方針を示し,納得してもらった。

2.3 開発した外付けプログラム

開発した外付けプログラムの一つ目は,システム間連携プログラムである。設備保全システムより,申請を行うと,ワークフローシステムで申請を開始できる。また,ワークフローシステムで決裁後,設備保全システムのステータスを更新する。

二つ目は,汎用的な申請フォームである。フォームには,電子データを添付できるようにしておくことで,あらゆる設備保全業務で申請・決裁を行えるようにした。

第3章 工夫と今後の改善点

3.1 業務パッケージ採用の目的を達成するための工夫

業務パッケージ採用により,紙帳票による申請・決裁から,電子的な申請・決裁を実現でき,保全業務のペーパーレス化が実現できた。設備保全システムとワークフローシステムとのシステム間連携は,外付けプログラムを作成した。これにより,申請の抜け・漏れを防ぐことができる。また,決裁後の設備保全システム内のステータス変更の忘れも防ぐことができる。これにより,業務の品質向上も合わせて実現できた。

設備保全業務で使用している帳票毎に申請フォームを用意するのではなく,汎用的な申請フォーム一つのみとした。これにより,開発費用を抑えることができた。帳票毎に申請フォームを作成した場合,帳票のレイアウトを変更するたびに改修費用が発生する。汎用的な申請フォームでは,帳票の電子データを添付するだけなので,帳票のレイアウトが変わったとしても申請フォームの改修は不要で,将来的な費用も低減できた。

3.2 成果と今後の改善点

業務パッケージの採用により,業務プロセスの改善,すなわち保全業務のペーパーレス化を実現した。また,設備保全システムでワークフローの機能を開発するのに比べて,開発期間を短縮することができた。この二点は高く評価できる。

今回,導入した業務パッケージ「ワークフローシステム」は,現時点では設備保全システムとのみ連携している。連携するシステムを増やしていけば,さらに業務パッケージ採用した効果が得られる。ワークフローシステムと連携するシステムを拡大し,さらなる業務プロセスの改善を実現したい。

参考文献

  • 平成21年度 春期 プロジェクトマネージャ試験 午後Ⅱ 問題 問3

更新履歴

  • 2023年9月29日 新規作成
  • 2023年12月31日 論文案を掲載

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